-11 -  では、この関係性をどのように変えていくのか?

シリーズ4回目、最終回の投稿です。
テーマは「では、この関係性をどのように変えていくのか?」です。

これまで、
 ① 現地化とは何か(意思決定と責任の重心)
 ② 在タイ日系企業のプレゼンス低下という構造変化
 ③ その背景にある関係性とマジョリティの無意識の前提
について整理してきました。
最終回となる今回は「では、この関係性をどのように変えていくのか?」
について、もう少し具体的に考えてみたいと思います。

多くの日系現地法人で見られるのは、
駐在員・出向者が変わるたびに、関係性の蓄積が断絶され、
組織文化継承の文脈が途切れてしまうことです。
 ➢ 駐在員が交代すると方針が変わる
 ➢ 過去の取り組みが引き継がれない
 ➢ ナショナルスタッフの中に、本当に伝えたい企業文化が蓄積されにくい。

これは、制度の問題でしょうか?
それとも人材の問題でしょうか?

私は、その根底には
「関係性が継承される構造になっていない」
という課題があると考えています。

パーパスや企業文化は、掲げるものではなく、
日々の対話の中で共有され、その積み重ねとして組織の中に根づいていくものです。
そしてそのパーパスや企業文化が、
ナショナルスタッフの間で共有され、再現され、継承されていく時、
はじめて、関係性と意思決定の前提が文化として継承される組織になります。
つまり問われているのは、
対話の質と、その積み重ねが組織文化として残るかどうかではないでしょうか。

では、その起点はどこにあるのでしょうか?
それはやはり、
マジョリティである日本人駐在員・出向者側にあると考えます。
ここで重要になるのは、どのような「前提」に立っているかです。
例えば、
 ➢ 自分たちは「正しい前提」に立っているという無意識
 ➢ 判断基準は本社にあるという暗黙の了解
 ➢ 現地は実行、本社は意思決定という役割認識
これらが変わらない限り、
どれだけ対話の場を増やしても、関係性は変わりません。

では、何から始めるべきか。
私は、次の3つが重要な起点になると考えています。
 ① 「前提を問い直す」
   自分たちの判断基準や正しさが絶対ではないと認識し、
   それを対話の中に持ち出すこと。
 ② 「未完のまま聴く」
   結論や評価を急がず、
   相手の現実や文脈を理解することに留まること
 ③ 「意思決定のプロセスを共有する」
   結論だけでなく、なぜそう判断したのか、その思考プロセスを開示すること

これらは一見すると小さな行動に見えるかもしれません。
しかし、この積み重ねが「何を言っても意味がない」という前提を崩し、
「ここで考えてもよい」という空気を生みます。
そしてその空気こそが、自律的な思考と行動を生む土壌になります。

現地化とは、意思決定と責任の重心を移すプロセスであり、
その実態は、関係性の質を変えていくプロセスです。
そしてその関係性は、
誰かが意図を持って関わり方を変えた時にしか動き出しません。

だからこそ、最後にもう一度問いを置きたいと思います。
その一歩は、誰が踏み出すのか?
それは、経営層である私たち日本人駐在員・出向者からではないでしょうか。

4回に渡りお読み頂きありがとうございました。
本テーマについての「まとめ」も次回に発行しようと思います。