-9 -  在タイ日系企業の”プレゼンスの低下”は、静かに進行している

シリーズ2回目の投稿です。
テーマは、
「在タイ日系企業の”プレゼンスの低下”は、静かに進行している」です。
前回、現地化とは「意思決定と責任の重心」であるとお話しました。
では、その構造は今どうなっているのでしょうか?

これまで在タイ日系企業は「品質の高いモノづくり」と「現場力」によって確かなプレゼンスを築いてきました。
しかし今、その前提が静かに揺らぎ始めています。

第一に、産業構造そのものの変化です。
例えば自動車産業では、EV化の進展によりこれまで競争優位の源泉であった内燃機関を中心としたインテグラル技術が急速にコモディティ化しつつあります。
また、タイ政府も産業の付加価値化を進めて行く施策を次々に打ち出しています。
これらは単なる技術の変化ではなく「強みの前提が変わる」という構造変化です。

第二に、意思決定スピードの差です。
市場環境の変化が加速する中でスピードそのものが競争力になっています。
一方で多くの日系企業では、
➢ 本社との調整プロセス
➢ 合意形成にかかる時間
➢ リスク回避を前提とした意思決定
これらが重なり、結果として機会損失が生まれているケースも少なくありません。

第三に、人材マネジメントの構造差です。
欧米企業や中国系企業ではジョブ型雇用を前提とし、
➢ 現地トップの裁量権が大きい
➢ 任期が長い(結果を出せなければ短いが)
➢ 責任と権限が一致している
といった構造が一般的です。

それに対して日系企業では
➢ 駐在期間の制約(3~5年)
➢ ローテーション前提の人事
➢ 権限と責任の分離
が意思決定の質と継続性に影響を与えています。

これらの変化は、個別の問題ではありません。
「これまでの強みが通用しにくくなっている」という構造的な変化です。

そしてこの変化は、急激に崩れるのではなく
気づかないうちに、静かにプレゼンスを削っていくという形で現れます。

では、この状況に対して何を起点に変えていくべきなのか、
制度か?
権限か?
人材か?

当然それらは重要な事ですが、私は、本質は別のところにもあるのではと考えています。

次回シリーズ3回目の記事は、tebiki株式会社でのセミナー終了後に掲載予定です。