-8 -  「あらためて現地化とは何でしょうか?」

「あらためて現地化とは何でしょうか?」
この度tebiki株式会社様からのお声がけで、在タイ日系企業をテーマとしたセミナーへ登壇致します。
その準備の中で、改めて見えてきたのが「現地化」と「プレゼンス」に関する構造的な課題でした。
この点につきまして、4回の投稿にて整理をしていきたいと思います。

1回目のテーマは、
「あらためて現地化とは何でしょうか?」です。

日系企業において、この現地化という言葉はこれまでにいくつかの文脈で語られてきました。

➢ 日本人駐在員の削減
➢ ナショナルスタッフの登用
➢ 権限委譲の推進
➢ 現地経営人材の育成

いずれも重要な取り組みだと思います。
しかし、それらが進んでも、なお現地化が進んでいる実感が中々持てないという声も少なくありません。

なぜでしょうか。

それは、これらの取り組みがいずれも「手段」であって、現地化の本質そのものではないからではないかと思います。
現地の日本人駐在員が減っても、重要な判断が本社に集中していれば、意思決定の主体は変わっていません。
ナショナルスタッフが登用されても、最終判断の基準が本社にあれば、組織の重心は動いてはいません。

現地化を考える上で問われるべきは、「どこまで任せるか」ではなく、
「誰が意思決定」を行うのかという点ではないでしょうか?

➢ どの段階で本社の決裁権限になるのか
➢ どこまでが現地の裁量で決裁できるのか
➢ 最終的な決裁基準は何に依拠しているのか

この構造の中に、その企業の現地化の「実態」が現れます。

そして、もう一つ重要なのは意思決定と責任は切り離せないという点です。
意思決定が本社にあれば、最終的な責任も本社にあります。
逆に、現地で意思決定が完結するのであれば、その結果に対する責任も現地が担うことになります。
➢ 事業成果に対する責任
➢ 投資やリスク判断に対する責任
➢ 意思決定の妥当性への説明責任
これらはすべて意思決定の所在と一体です。

それでは、現地化とは何でしょうか?
それは、企業の意思決定の重心を現地に移していくプロセスであり、
同時に、その意思決定に伴う責任の重心も現地に移していくプロセスの事ではないでしょうか。

では、なぜ、
企業は意思決定と責任を現地に移す必要性を認識しながらも、実際にはそれを実現していくことが中々できないのでしょうか?
そこにはいくつかの構造的な要因があるように思えます。

第一に、最終責任の所在です。
多くの企業では、海外子会社の最終責任は本社に帰属します。
これは、出資先であること、投資や撤退の最終判断を担っていること、そして取締役や株主への説明責任を負っていることに起因します。
つまり構造的に、本社がリスクを引き受ける立場にあるために重要な意思決定を手放しにくい状態になっています。

第二に、評価とリスクの構造です。
多くの場合、評価は成功よりも失敗の影響が大きくなります。
そのため、不確実性の高い判断ほど慎重にならざるを得ず、
結果として意思決定は本社側に引き寄せられやすくなります。

第三に、情報の非対称性です。
現地は現場に近く、本社は全体を見ています。
この構造の違いが「どちらが判断すべきか」という迷いを生み、意思決定を引き戻す圧力になります。

第四に、関係性の構造です。
現地は本社の意向を前提に判断し、本社は現地の判断をそのままは受け取らない。
この関係性の中では、意思決定は必ずどこかで立ち止まり、最終的に本社に引き戻されます。
つまり、意思決定が動かないのは、個人ではなく関係性の問題です。

つまり、現地化が進まないのは意思や能力の問題ではなく、構造としてそうなっている側面があるということではないでしょうか?

だからこそ現地化とは、単に制度を変えることでも、日本人駐在員を減らしナショナルスタッフへ入れ替えることでもなく、意思決定と責任がどこに置かれるのかという構造そのものに向き合うプロセスになります。

皆さんの組織では、意思決定と責任はどこにありますか?
そしてそれは、将来を意図したものになっているでしょうか?

2回目は、
在タイ日系企業の「プレゼンスの低下」は、静かに進行している
について投稿予定です。